市民の利益にならない市庁舎移転

奥野 枚方市議会議員(2022年10月)

9月26日、市役所の位置に関する条例の改正条例は、賛成18、反対12で「否決」されました。

議長も含む出席議員の2/3、つまり賛成には20票が必要な議案でしたが、記名投票により、白票(賛成)を投じたのは18議員、青票(反対)を投じたのは12議員で、「否決」という結果でした。

 

特別多数議決を要する市役所の位置に関する条例が地方議会に提案されたということ、そして、その条例が「否決」されたということは非常に珍しい、想定することのできなかった「事件」であると思います。

 

市が「はじめに結論ありき」の計画や考え方をまとめ、きちんとした説明をしていないように思いますので、私なりに市民の皆さんにわかりやすい説明を書いてみました。詳細は、ホームページに記載していますが、ここで、エッセンスだけでもお伝えできればと思い、記載させていただきます。なお、ご覧いただき、感想やお𠮟り、誤っている箇所のご指摘、ご意見等があれば、お寄せいただければ嬉しく思います。

 

Ⅰ. はじめに

枚方市議会では、この数年間、枚方市駅南側の再整備をどう進めるかが大きなテーマとなっています。

 

2022年9月26日に開催された市議会においては、市長が提案した「枚方市役所を現在の場所から、大阪府北河内府民センターのある場所に移転する」と定める条例案が「否決」されるという、とても珍しいことが起こっています。

 

ただ、「否決」と言っても、議員総数30人で[賛成]18人vs[反対]12人だったので、数の上では[賛成]が多数だったのですが、市役所の位置を変えるためには、3分の2以上(20人)の[賛成]が必要だと法律で定められているため、賛成者数がそれに足りなかったので「否決」となったわけです。

 

この条例案に関して、議会では厳しい質疑・討論が行われました。私は「反対の立場」で、積極的に質疑・討論を行いました。しかし、傍聴してくださった市民の皆さんからは、「話が難しい。なぜ、このことが大切なのかがよくわからない。わかりやすく説明してほしい。」というご意見・ご感想が寄せられています。

 

そこで、私なりに、Q&Aの形での説明を試みてみました。以下、「質問項目」だけ掲載しています。(詳細は、ホームページに記載しています。)

 

Ⅱ.枚方市役所の位置をめぐる意見対立について

Q1:「市役所の場所(位置)」って、そんなに大切なことなのですか?めったに行かないし、今の市役所が北河内府民センターの場所に移転したって、市民にとって、それほど大した問題ではないように思いますが?

 

Q2:新庁舎を「⑤街区」に移そうという考え方は、どんな理由に基づくものなのですか?

 

Q3:「連鎖型まちづくり」という考え方もいいように思いますが、何か問題があるのですか?

 

Q4:合同庁舎化をできなければ、国や府の財政的な援助はないのですか?

 

Q5:「⑤街区」に建設する新庁舎の土地を、市はどうやって手に入れるのですか?

 

Ⅲ. 枚方市駅周辺の再整備をめぐる意見対立について

Q6:いずれにしても、「④街区」の中の市有地は、売却されることになるのですね。売却された土地は、どのように使われるのですか?

 

Q7:複合施設とは何ですか?

 

Q8:複合施設に何か問題はあるのですか?

 

Q9:タワーマンションはあちこちの駅前でも建設されていて人気もあり、入居者が増えると税収が増えるというメリットもあるのではないですか?

 

Q10:「区分所有建築物」という所有形態の建築物は、何が問題なのですか?

 

Q11:「④街区」の中の地価の高い市有地を手放し、売却するのですから、「④街区」「⑤街区」の再整備に使う税金は少なくてすむのでしょうか?

 

Q12:「④街区」「⑤街区」の整備計画の内容で、他に指摘されている問題点はありますか?

 

Q13:これだけ問題が指摘されているのなら、「④街区」「⑤街区」をどのように整備するのかは、もっとしっかりと検討し直して修正すればいいのに、なぜそうしないのですか?

 

Q14:伏見市長がそうした判断をされる理由はなぜだったのでしょう?

 

Q15:過去に行った「国や大阪府との確認」とは何ですか?

 

Q16:国や大阪府との確認を守らないのは良くないのではありませんか?

 

Q17:枚方市が「⑤街区」に市の新庁舎を建設しないことになれば、「⑤街区」はどうなるのですか?

 

Ⅳ. 今後の進め方について

Q18:移転条例が「否決」されたことで、市は何を行わなければならなくなったのですか?

 

Q19:奥野議員の意見はどのようなものですか?

 

以上、「質問項目」だけ掲載していますが、それぞれの質問項目に対する回答については、ホームページをご覧いただければ嬉しいです。これらの説明をさせていただいた上で、私が皆さんにお伝えしたいことは以下の4点になります(Q19の回答になります)。

 

(1) 何よりも優先しなければならないのは、東南海・南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備えることだと考えています。そのためには、まず、廃止され老朽化した公共施設を、すみやかに解体・撤去すべきであると考えます。外壁タイルの落下防止のための防護ネットを大きな壁面3面に設置してまで残している旧枚方市市民会館大ホール棟はその典型です。

大規模災害が発生すると危険な建築物となり、対応せざるを得なくなります。今、できる災害対応は、危険建築物である施設を前もって解体・撤去しておくと、そこには大きな空間(広場)が確保できます。そうすれば、その空間(広場)を有効活用することもできるのです。

 

(2) 解体・撤去の次に優先して整備すべきは、新庁舎の建設だと考えます。位置は「④街区」で、上記の解体・撤去後の市有地を敷地にするのが最短で整備できる方策であると考えます。新庁舎の施設や建て方については、さまざまな工夫を行えばよいと思います。「④街区」の残りの市有地をどのように活用するかについては、しっかりとした調査・検討と、議会・市民レベルの議論を重ねるべきだと考えます。

都市の魅力を高める施設を整備する、さまざまな都市機能を将来にわたって管理(マネジメント)できる仕組みを作って誘導する、一部の土地を完全売却する、こうしたこともあわせて検討すればよいと思います。ただ、市の財政負担への影響を考え、段階的に進めることが必要であると考えます。

 

(3) 「⑤街区」については、大阪府と北河内府民センター跡地の活用について改めて協議を行うとともに、枚方寝屋川消防組合とは、「枚方消防署」の建替えを「⑤街区」で行うことについて協議・検討することが必要であると考えます。

 

(4) 土地区画整理事業については、「⑤街区」の大阪府の用地と「④街区」の市有地の換地、「⑤街区」への新庁舎建設を想定しない場合に、どのような土地区画整理事業になるのかを検討するとともに、土地区画整理事業手法導入の必要性について、再度、検討することが必要であると考えます。